三十路の後半で上京した当時、 ブランディングに定評の高い日系製薬会社が始めたスキンケア事業で、百貨店出店4店舗目の店長として勤めていた札幌からの異動だった。 百貨店の化粧品売場に勤めたのは、二十代から勤めていたエネルギー商社が手探りで始めた化粧品事業が廃止となり、どんなに画期的な良い商品も自己満足事業では失敗すると学び、創設時のブランド事業とはどういうものか?と、興味を持ったからだ。 そして数年後、ブランドが成長すれば現場経験者がブランド運営を担うことになるだろう、と勝手に見込んで入社した2年後、売上不振が続いていた東京・渋谷の百貨店に出店していた店舗立て直しのために、上京する。 札幌の人口は190万人に対し、東京は1300万人。 桁違いの人口と経済力の街にも関わらず、当時の渋谷店の売上は札幌の半分だった。 「渋谷なのにねぇ?」北の国から不思議に思う売上の低さである。 売上が伸びない一番の理由を会社は「店舗の場所」その次に「スタッフのやる気」という。1300万都市のJR山手線の中心で、売れない理由がヤル気とは… 異動に際しスタッフの入れ替えをお願いすると、2つ条件が付いた。
【会社からの条件】
1.スタッフ入れ替えは半分、一番の問題とされるスタッフは残留
2.渋谷店の年間売上、前年比150% クリアすること
百貨店の商習慣・利用客の流れなど1ヶ月様子を見たところで、下記の4点に着手して 結果、年間売上は前年比168%、顧客獲得数1位となった。
【着手したこと】
1.シフトの改善
2.時間効率管理による機会の均等
3.店舗管理作業の均等分担
4.年間の新規客数・顧客数の目標と売上予算の細分化、その根拠の共有
1.シフトの改善
早くに効果が出せる改善策は、シフト。
シフト作成は、その店舗の店長・チーフが担当するのだけれど、渋谷店のシフトは、客の流れに関係なく自分たちの都合で作られていた。 誰でも早く帰りたいから早番が多く、遅番が少ない。
しかし、渋谷店は街柄、午後18:30~の売上が6割を占める(コロナ禍は別として)
私鉄・地下鉄・JRが渋谷駅に一気に停車するタイミングが18時半前後にあり、その流れで来店客も集中するのだけれど、この店舗には集中するタイミングに人がいなかったのだ。
残された遅番は多忙な時間を過ごし、焦りからミスも増える。過去のシフトから各スタッフの遅番と早番の割合を見ると、作成者の独断と偏見の配分が伺えた。
シフトとは、スタッフの生活に直結するタイムスケジュールだ。作成者の偏見が差別を生み、気持ちは小さな店舗の小さな政治に注力されるから、人間関係も悪くなる。 シフト作成を権利と取るか、任務と取るか。 シフトは、売上に責任を持つ人が、その達成のために互いに協力しあえる環境を整えるために作るもの。シフト表からは、作成者した責任者の人柄も伺えるのである。 ヤル気を司る大きなカギは、平等なシフト。 平等なシフトが、いいチームを作り、売上を伸ばす。 シフトの攻略は、売上をつくる大きなカギなのです。
シフトの改善は、異業種参入で始まる店舗展開でよく見られる問題です。
商品単価にもよりますが、消費財で月間売上500万以下の店舗が「スタッフ4名で足りない」という場合、シフトに問題があると考えられます。
次回は 2.時間効率管理による機会均等について。
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